20.1.19.

「主の祈り」には、私たちに対する神の御心が込められています。イエスは、「天にいます私たちの父よ。御名があがめられますように」(9)と祈るように教え、続けて「御国が来ますように」(10)と祈るようにと教えました。この祈りにはどのような意味があるのでしょう。

1.御国とは神の支配する王国

「御国」のギリシア語は「he basileia」で、「あなたの王国(支配、統治)」という意味です。それは、「神が支配する王国」のことであり、民族や国家を超えた「神の支配」のことです。そこには、悪もなく、争いもなく、苦しみや悲しみもない、完全な世界です。パウロは、「神の国」には、「義と平和と聖霊による喜び」(ロマ14:17)であると言っています。この「神の国」は、最初に「エデンの園」において実現していました。神は、天地万物を創造し、エデンの園に、アダムとエバを住ませました。そして、彼らにこの世界を支配する権威を与え、この世界を管理させました。この世界は、「神の支配」のもとにありましたから、悪もなく、争いもなく、苦しみや悲しみもない、完全な世界でした。

しかし、アダムとエバは、神の言葉に従うよりも、サタンの言葉に従ってしまいました。その結果、この世界は、「サタンの支配」の支配の下に置かれてしまいました。ですから、聖書は、サタンを「この世を支配する者」(ヨハ12:31)と呼び、「世全体は悪い者の支配下にある」(Ⅰヨハ5:19)とも言っています。サタン自身もこの世界は「私に任されている」(ルカ4:6)とも言っています。こうして、この世界は、「サタンが支配する王国」となってしまったのです。その結果、世界は呪われ、あらゆる悪が行われ、争いや災いが起こるようになりました。

しかし、神は、この世界に再び「神の国」を回復させるご計画を持っておられました。その計画が記されているのが「聖書」です。「神の国」は、聖書のテーマの一つです。旧約聖書の最初の書である創世記から、新約聖書の最後の書の黙示録までの聖書の話は、失われた「神の国」の祝福を回復させる神のご計画の話なのです。ですから、黙示21,22章の御国の情景は、創世1,2章のエデンの園の情景と似ています。

2.イエス・キリストによる御国の到来

神は、「神の国」を回復させるために、救い主を送るご計画を持っておられました(創3:15)。そして、「神の国」を回復させるために、神は一人の人アブラハムを選ばれました。そして、神は、アブラハムの子孫であるイスラエルを通して、この世界に「神の国」を回復させると約束されました(創12:1-3)。さらに神は、イスラエルのダビデ王の子孫から、「神の国」を回復させる王、すなわちメシヤ(キリスト)を遣わすと約束されました(Ⅱサム7:12-13)。そして、長い時を経て、「アブラハムの子孫、ダビデの子孫」(マタ1:1)として、イエス・キリストが生まれたのです。

イエスは、「サタンの国」を打ち破り、「神の国」を回復させるために来られました。イエスは、宣教の初めに「時は満ち、神の国は近くなった」(マコ1:15)と宣言されました。そして、イエスは「ガリラヤ全土を巡って、会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、民の中のあらゆる病気、あらゆるわずらいを直され」(マタ4:23)ました。Cf.マタ9:35。イエスは、人々を病気や悪霊から解放することによって、実際に「神の国」の祝福を現わし示したのです(マタ12:28)。そして、イエスは、十字架にかかって死ぬことによって、サタンを打ち砕き、人間をサタンの支配から解放して下さったのです。「そこで、子たちはみな血と肉とを持っているので、主もまた同じように、これらのものをお持ちになりました。これは、その死によって、悪魔という、死の力を持つ者を滅ぼし、一生涯死の恐怖につながれて奴隷となっていた人々を解放してくださるためでした。」(へブ2:14-15) こうして、創3:15の預言の通り、救い主によって「サタンの国」は打ち破られました。そして、イエス・キリストによって、この世界に「神の国」も到来したのです。

3.聖霊の力を受けた教会による御国の実現

「神の国」回復の働きは、イエスの弟子たちと教会に委ねられることとなりました。しかし、彼らは、ダビデ王国が実際にこの地上に再現されると考えていました(使1:6)。それに対して、イエスは、イスラエルの国としての再興を否定することはなく、「いつとか、どんなときかということは、あなたがたは知らなくてもよいのです。それは、父がご自分の権威をもってお定めになっています」(使1:7)と答えました。そして、「神の国」の回復は、「聖霊が…臨まれ…、力を受け…、地の果てにまで」、イエス・キリストの「証人」となることによって実現すると言われたのです(使1:8)。

この後、イエスは、弟子たちが見ている目の前で、天に上られました(使1:9)。しかし、「神の国」回復は、「聖霊」に満たされて「力を受け」た教会に委ねられたのです。かつて、イエスが12弟子や70人の弟子を遣わしたように、イエスは、私たち教会をも「神の国」の回復の働きのために遣わしているのです。ですから、教会は、聖霊に満たされ、聖霊の力を受けて、全世界に出て行って、「神の国」の福音を伝え、実際に病人を癒し、悪霊を追い出し、この世界に「神の国」の祝福を実現していかなければならないのです(マコ16:15-18)。それは、主がパウロを宣教者として召された時に語られた言葉に見ることが出来ます。「わたしは、この民と異邦人との中からあなたを救い出し、彼らのところに遣わす。それは彼らの目を開いて、暗闇から光に、サタンの支配から神に立ち返らせ、わたしを信じる信仰によって、彼らに罪の赦しを得させ、聖なるものとされた人々の中にあって御国を受け継がせるためである。」(使26:17-18)私たちも、人々を「サタンの支配から神に立ち返らせ」、「御国を受け継がせる」のです。

 

「神の国」は、キリストの再臨の時に、この地上に千年王国によって具体的に現され、その後、天地が滅びて新天新地が造られる時に完成します(Ⅱペテ3:10-13。黙20:1-6)。「聖霊」に満たされて「力を受け」、「神の支配」、「御国」をもたらしましょう。